インドネシアに行けないのかもしれない
出発3日前。もうすぐ出発の予定だが、チケットが送られてきていない。のんびりすることには自信のある僕も、そろそろ不安になってきた。ジャワの人たちは、のんびりしていると聞いていたので、僕も合わせてのんびりし過ぎた。運営側から何の音沙汰もないまま、出発3日前になってしまった。もしかして僕の存在は忘れられてしまっているのではないか。本当はジャワに行かなくて良いのかもしれない。そう考えて、運営との間に入って調整してくれている人に確認の連絡を入れた。
レジデンス参加の経緯
キュレーターでインドネシア近現代美術史が専門の羽鳥悠樹さんが、ビエンナーレの運営1とコミュニケーションをとってくれている。彼は、インドネシアでの留学経験もあり、インドネシア語も堪能だ。僕がインドネシアでの展示に参加することになった経緯は、彼が推してくれたからだった。
羽鳥さんとは、数年前に展覧会でお世話になったことがある。その時にインドネシアのコレクティブについての話を聞かせてもらったことがある。僕は今までに何度かコラボレーションや、コレクティブを作ろうと実践してきた。三号倉庫2というレジデンススペースに参加した時に、いつでも話し合いができる仲間がいて、創造的な談話する場があったのだが、そのような環境を自分でもつくりたいと思っていたからだ。しかし、共同で何かをつくることの難しさを知り、その都度挫折しているような気がする。それでも、創造的なコミュニケーションが可能な場をどうやったら設定できるのか、今でも創作を通して探求しているつもりだ。
その時に一緒に話した会話を覚えてくれていたようで、推してくれることになった。

インドネシアのアート
アート関係者の中には、最近のインドネシアと言えば、コレクティブというイメージがある。コレクティブとは、チームのようなものだ。コレクティブが発展すればコミュニティになる。インドネシアにはルアンルパ3と言うアートコレクティブがあり、ドクメンタ4という美術の世界大会のような展覧会を任された。共同で何かをつくり上げることは難しいことだが、なぜインドネシアのコレクティブではそれが上手く機能するのか研究をしている人も多い。20年近く前に、三号倉庫に参加して以来、僕も長い間コラボレーションの方法には関心を持ち続けてきた。あわよくばインドネシアでコラボレーションについての秘訣を探れたらと考えている。
のんびりのさじ加減
羽鳥さんに運営側への問い合わせをお願いすると、すぐに確認をしてくれた。すでにチケットは取っているらしいとの連絡を受ける。どうやら僕は本当にインドネシアには行くみたいだ。沖縄には、ウチナータイム5というのがあるが、ジャワタイムはそれを超えているのではないか。
しばらくして、チケットやらスケジュールやらいくつかの資料がまとめて送られてきた。チケットのみならず、一日目のホテルの手配や、滞在中の僕のスケジュールまで考えてくれている痕跡があり、予期せずちゃんとした物が届いたため驚いた。むしろ、素晴らしい対応ではないかとさえ錯覚してしまう。のんびりしている所を、日本人的な仕事のやり方を押し付けたくなかったので、ギリギリまで待っていたのだが、結局、催促する形になってしまったことを悔いた。
- 今回僕が参加するのは、第11回 東ジャワ・ビエンナーレという展覧会だ。2005年から2年に1度の間隔で開催されている。東ジャワのことをJaTimと言うので、英語表記だと、Biennale JaTim 11となる。第11回の展示テーマは「沿岸域の回復力」となっている。Biennale JaTimウェブサイト ↩︎
- 参考:西日本新聞2022年3月10日【創作続ける覚悟と夢くれた 若手画家のあしながおじさん死去 福岡のアート界支援】 ↩︎
- ルアンルパ(ruangrupa)はジャカルタ南部を拠点とする現代美術集団。展示企画、出版、ワークショップ、研究、プラットフォームの提供など幅広く社会と関わる活動を行っている。Ruangrupaウェブサイト ↩︎
- 2022年に開催されたドクメンタの芸術監督にルアンルパが選出された。インドネシアの田舎にある米納屋の使われ方にある、集団性や公平な分配から着想を得て、持続可能性の高い社会の在り方をテーマとした展示を企画した。Documentaウェブサイト ↩︎
- ウチナータイムは、沖縄時間という意味。独特の時間感覚があり、予定時刻より遅れて始まることを言う。参考Wikipedia(ウチナータイム) ↩︎