Day1-1.「旅が始まろうとしている」

出発当日はまだ実感がない

 エアチケットが出発直前まで手に入らなかったので心配していたが、ビエンナーレの運営スタッフは、行きだけでなく帰りの便もすでに手配していた。しかし、帰りの便が伝えていたスケジュールと違ったので、変更してもらうようメッセージを入れた。今日は、いよいよ出発だと言うのに、まだスケジュールのやり取りをしている。

 昼12時頃自宅を出て、空港へ向かう。地下鉄の前では、デモの準備が行われていた。韓国では日常的にデモがあるので、見慣れた風景だが、大きなスクリーンが道路の真ん中に置かれているので、大規模なデモがあるようだ。ユン・ソンニョル退陣!1と書かれているのだけ分かった。直前まで、インドネシアに行けるのか確信が持てなかったので、まだ実感がない。そのため、スーツケースを引きながら、まださっきのデモのことを考えていて、インドネシアのことがぼんやりしている。

出発前に見たデモの準備の様子
デモの準備が行われている様子
空港で旅を思い出す

 インチョン空港に到着してチェックインが済んだ頃、帰りの飛行機についての返答があった。空港で帰りのチケットを変更できるか確認して欲しいと言うので、航空会社のスタッフに聞いてみる。しかし、チケットを手配した旅行会社に問い合わせる必要があり、変更できないと言う。仕方がないので、別の航空会社の人に何度か聞き、別のカウンターを見つけてようやくチケットを変更できた。旅では、一度ではなく数度トライしてみることが大事だということを思い出す。

 搭乗時間が近づくと、インドネシア行きのアシアナ航空の搭乗口には長蛇の列ができていた。それを見て、並ぶのを諦めて座って待った。インチョンからジャカルタの飛行時間を調べると、約7時間もかかるらしい。随分遠い所へ行くようだと、搭乗直前にようやく知る。インドネシアは遠い。

あっという間の7時間
旅の1食目は機内食
アシアナ航空の機内食。ビールは韓国ビールのCASS。

 アシアナ航空は格安航空ではないので普段は乗れない。機内食も鳥かビビンバを選ぶことができたし、ビールも選ぶことができる。映画が見れる飛行機も久しぶりだ。映画を2本鑑賞。2本目に見たは「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン2」は、アポロの月面着陸の映像をテーマとした映画。詐欺を繰り返してきた女性が、NASAの広報を担当する物語。アポロ計画の捏造映像を制作していく過程が描かれるフィクションだった。「広告は詐欺に似ている」と主人公の女性が言っていて、なるほどと思う。世界中が広告で溢れていることを考えれば、随分皮肉の効いたセリフだ。

 映画を見ていたら、インドネシアに向かっていることを、また忘れかけていた。着陸直前の飛行機のモニターに、外気は28度と表示され。到着したんだなと思う。旅が始まろうとしている。

機内のモニター

  1. 2024年11月9日時点では、尹大統領の戒厳令はまだ出されていない。この時期は労働組合によるデモがしきりに行われていた。画像内の文字は、”윤석열 퇴진!!노조할 권리 쟁취!!산별교섭 제도화!”「尹錫悦(ユン・ソクヨル)退陣!! 労働組合を作る権利を勝ち取れ!! 産別交渉の制度化!」と書かれている。産別交渉は、特定の産業全体の労働組合が一括して経営者と交渉するという意味がある。企業の力が強いため、産業別の交渉ができるように改善が求められている。当時は医者などが長期間のストライキを起こし、問題が起きていた。与党(国民の力)は、基本的に企業寄りの立場を取ることが多く、産別交渉の制度化に慎重で、野党(共に民主党など)は、労働組合の権利を強化する立場が比較的強い。 ↩︎
  2. フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンのウェブサイト ↩︎