day4-5 ソラワタン

滞在記

 SERBUK KAYUのメンバーがスラバヤに帰って行くのを見送ったあと、Prewanganのスタジオに戻り、いよいよレジデンスが始まったなという気持ちになる。不安な気持ちもあるが、これからどんなことができるのか楽しみだ。
 スタジオで歓談が始まった。あまり何の話をしているのか分からなかったが、Prewanganメンバーの一人がサルーというイスラム教の男性が身に着ける布を僕に渡してきて、身に着け方を教えてくれた。到着してそうそうに、嬉しいサプライズだった。布は円筒上に縫われているだけで簡単なもので、スカートのようになっている。腰の所の余った布を下に折っていき固定するものだ。イスラム教の正装で、礼拝の時などに身に着けられたりするそうだ。三種類の巻き方を教えてもらったが、けっこう身に着けるのが難しく、ゆるくしか固定できなくてしばらく苦戦していたが、その様子を見てみんなは笑っていた。アンダーウェアを身に着けるべきか聞いたら、どちらでも良いと言われたので、これはたぶん脱ぐべきなんだろうと考えてパンツを脱いでいたからだった。サルーをしっかりと固定できないものだから、丸見えになりそうで危なくて笑われていた。結局、アンダーウェアやハーフパンツなども身に着けたままでも良いことが分かり、外で脱げたら大変なので下は履くことにした。布は一見、一枚の布でできているように見えるし、前後などが無いようにも見えるが、方向がある。一部違う模様が入っている布が細く入っていて、それがお尻のほうになるようにして巻くのが正しいそうだ。

 サルーの着方をなぜ教えてくれていたのか、最初のうちは分かっていなかったのだが、この日ソラワタンというイスラム教の祭りがあるということが分かった。イスラム教の祭りなので、フォーマルな服装で行くべきだからだよと教えてくれた。到着初日にこんなことがあるとはラッキーだ。バイクの後ろに乗せてもらい、祭りへ出向いた。

 会場に近づくにつれ、大きな音が聞こえてきた。想像していたよりも、かなり多くの人たちがいるというだけでなく、野外コンサートのような雰囲気だ。ステージではバンドが演奏しており、歌が歌われていた。周りには出店が出ていたりもする。この時カメラを持ち歩いていなかったため、スマホで撮った数秒の映像しか残っていなかった。少しは雰囲気が伝わると良いが、リズミカルな音楽が鳴っているのが分かると思う。何を意味しているものだったか忘れてしまったが…たくさんの大きな旗が振られていた。

 しばらく会場の雰囲気を見たあと、出店で上げ豆腐とトッポギのようなものを買って、外で食べた。この時も、何の話か分からないことが多かったのだが、何やら楽しい雰囲気だ。スパイシーフードは好きかとか、日本にも上げ豆腐はあるかなど、そんな話は少しした。インドネシアでは、よく輪になって座り話をしていると聞いたことがあったが、ここのスタジオのメンバー達も、よく喋る。しばらくここでお喋りが続き、ようやく帰ることになったようだった。

 もうけっこう遅い時間だったし、これで解散なんだろうと思っていたが、スタジオに戻ると今度は庭先で火を起こし始めた。乾燥したトウモロコシの芯を燃料にしていたのも若干カルチャーショックであったが、かなりよく燃えていたし、すぐに燃え切ってしまうのではなく、ちゃんと炭火になっていたので、着火剤的な役割もありつつ炭火にもなるので、これは知恵だなと思った。日本でもバーベキュー用の燃料として採用されて良いのではないかとさえ思う。錆びついた鉄板の上で燃やしていたから、何のための火か分かっていなかったが、これは火遊びしているわけではなく、魚を焼くための火だった。メンバーの一人が、冷凍された魚を持ってきて、中身を見せてくれた。見たことがない形の魚が入っていた。ニンニクやスパイス、何かのソースなどを足してソースをつくり、それをつけた食べた。基本的に流れに身を任せていたから、自分でも気が付かなかったのだが、みんな手で食べていたし、僕も手で食べていた。こちらに来て初めて手で食べた食事となった。

 遅くまで庭でお喋りをして、みんなそれぞれの自宅に帰っていった。何時になっていただろう。おそらく一時は回っていたと思う。スタジオに一人残された僕は、なんとなく心細くもなったが、今日はいろいろあり過ぎて、疲れた。気が付かないうちに寝ていた。

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