サッカー観戦の後、スタジオにもどって4人で飲んだ。
アートコレクティブとONE PIECE
Prewanganのメンバー達は、全員がアーティストと言うわけではない。(と言って良いか分からないが)しかし、この村にいると、アーティストとは誰か、アートとは何か改めて考えさせる。少なくとも僕には分からなくなってきている。Prewanganのメンバーは全員が自分の仕事を持っていて、当たり前だが普段は別の仕事をしている。どんなメンバーがいるのか全体はまだ把握できていないが、職種に合わせてそれぞれに得意分野や、役割があるようだ。
各メンバーは、ビデオ、音楽、溶接、人形劇、教育など、それぞれ違う分野の仕事や得意分野を持っている。最近分かってきたが、料理担当もいるようだ。その人は自分のことをONE PIECEのサンジ(料理人のキャラクター)と言ったことがあった。
それを聞いて、Prewanganはアーティストとしてよりも、友人や仲間としての結びつきが強いメンバーが集まっているのかもしれないと思った。そのため、常に協力したり、話し合うことができる状態になっている。サッカーを見に行ったり、酒を飲んだり、魚を焼いたり、作品を作ったりと、彼らは毎日のように顔合わせているので、日常生活と完全に一体化しているように僕には見える。このような姿を見て、アートコレクティブのイメージが僕の中でONE PIECEになった。
アダルトサイトや性教育について
ビールとワインを出し、インドネシアの音楽について話していたはずが、いつしかインドネシアの性教育や、日本のセクシー女優の話になっていった。
知らない日本人女性の名前を聞いてきたことがきっかけだった。数日前にも知っているか聞かれた名前だったので、誰なのか聞いてみた。アーティストかと聞くとアーティストだと言う。それで、どんなアーティストか聞くとセクシー女優だったのだ。最初は何を言っているのか分からず混乱したが、確かに、ネットで名前を検索してみると今はいろいろな活動をされているようで、アートの話もしているようだった。なぜ彼女を知っているのか聞くと、彼らの間で貸し借りしたDVDが、このセクシー女優のものだったからだそうだ。狭いコミュニティなので、この村の人達は皆同じDVDを手にしたに違いないと、自分の中学時代を思い出し、想像した。
インドネシアではAVが禁止されている。海外旅行へ行った際に持ち込むのかと聞くと、もし見つかると警察に行かなければならないし、インドネシア人に対しての荷物チェックが厳しいので難しいと言っていた。もし見つかってしまった場合のリスクが大きいらしい。しかし、彼らが貸し借りしていたDVDはこの地に存在していたので、誰かが持ち込まない限り見ることができなかったはずだ。しかし、彼らは、誰が最初に持ち込んだのか分からないと答えた。それで、外国人なら簡単に持って入れるかもと、笑って僕にリクエストした。
人口増減と性教育
それから、性教育や人口増減についての話になり、日本の事情を話した。彼らは、幼少期に性教育は無かったと言っていた。「人間以外の動物は性教育を受けなくてもセックスして子どもを作っている。なぜ人間に性教育が必要なのか」と不思議がっていた。それは、確かに彼らは自然なことを言っている。インドネシアは人口が増えているが1、日本は社会で生きていくことが難しいし、お金が必要だから、予期せず子どもを授かるのを避けるためだよと言った。
この前カフェで、Prewanganメンバーの一人がジョブレスという言葉を教えてくれた。仕事はないが、お金を時々得て生活している人たちのことだと言っていた2。確かに、カフェには昼間から集まっている人達がたくさんいるので、日本の会社のような働き方をしている人は少なそうだ。ソボントロ村は、コミュニティの結びつきが強く、隣人と協力できる環境が常にある。そのため、少しのお金でも、比較的生きやすいのかもしれない。健康保険も数百円だと言っていたし、病院は特別な治療を除けば原則無料だと言っていた3。
不便さと生きやすさ
日本ではジョブレスになれば、ホームレスになる可能性がある。ジョブレスに対する日本でのサポートは、失業保証や再就職支援などの制度、あるいは支援団体による炊き出し等あるが、コミュニティが住民を支えるような構造は、あまり残っていないのではないだろうか。ソボントロ村では、コミュニティの強さが、子どもを授かることを比較的容易にしているように思う4。そのことが、彼らの性教育についての考え方にも表れているのかもしれない。
町内会や子ども会、PTA等のコミュニティに煩わしさを感じる日本人は多い。しかし、この煩わしいはずの場が、彼らにとっては生きやすさに繋がっている。おそらく僕たちがこのようなコミュニティを煩わしく感じるのは、不自由に感じるからだ。いろいろな不自由はあるが、一番は、自由に表現できる状況に無いからではないだろうか。思ったことを発言すれば、リーダーシップを取らなければならなくなり、拘束時間も長くなりそうだ。しかし、ソボントロ村の人達は、家族のように話をしている。そして、よく笑う。永久に話が続く。
2夜連続!マミーの深夜食堂


話をしていると、今日も午前1時になった。インポーが、昨日も行った深夜食堂へ行こう言うので、バイクに乗って4人で行くことになった。深夜食堂のおばちゃんは、マミーと呼ばれている。みんなマミーと言って声をかけ、多くの人に親しまれている様子。とても元気が良い人で、僕に対しても英語で挨拶をしてくれてフレンドリーだ。マミーが調理を終えて開店するまでの間、早めに来た客はみんな、食堂の床の上に転がって待つ。夜でも蒸し暑いので、床のタイルが冷たくて気持ちが良い。寝転がっている客を見て、みんな家にいるような気持ちでこの食堂を利用しているんだろうと想像した。マミーが店をオープンした。今日はフライドエッグを選択。とてつもなく美味い。
食事中に遠くの方で雷が光った。帰宅。就寝。
- インドネシアは現在世界第4位の人口。しかし出生率は減ってきているようだ。https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/05/a8846219841d115c.html ↩︎
- Joblessは一般的には無職を意味する。 ↩︎
- インドネシアの社会保障実施期間のBPJSによると保険料は月給の5%、あるいは個人経営主の場合、最低42000ルピア(約400円)から加入できる。https://www.mhlw.go.jp/content/001187780.pdf ↩︎
- 日本と比較して容易とは、必ずしも簡単に子どもを育てることができるということではない。貧困、身寄りのない児童、ストリートチルドレン等の問題もある。https://www.mhlw.go.jp/content/001187780.pdf ↩︎