ついに祭りの日がやってきた。ソボントロ村に来てすぐに、みんなで話し合っていた祭りだ。タタカンと呼ばれている獅子舞のようなパフォーマンスを見ることができる。
昨日も朝3時頃に寝たので、まだ眠いが、祭りは朝8時から始まる。朝7時半頃インポーから電話。8時頃に彼が来て、バイクの後ろに乗って会場に向かった。
祭りへ行く

祭りの会場はビーチだ。昨日は建てられていなかったステージがビーチに建てられていた。普段は見ることがない出店もたくさん来ている。会場に近づくにつれ、大きな音で音楽が聞こえてきたし、たくさんの人が歩いていて、バイクで通るのも難しくなってきた。
コーヒーや揚げ物系の食べ物、たこ焼き、ひよこ、おもちゃ等、いろいろな出店が並んでいる。何なのかよく分からない手作りの商品が並んでいる店もある。




パフォーマンス前に行われる儀式
出店を見学中に、よく出会う子達と遭遇。今日の伝統的な祭りに出演するための衣装を身に着けている。衣装に刺繍されているロゴは、インポーが数日前にパソコンでデザインしていたものだった。いつの間にか20人分くらいの衣装ができていて驚いた。

ソボントロ村のタタカンチームが待機している場所へ行く。みんな同じ衣装を着て準備している。待機場所には、タタカンのマスク以外にも、お化けのような女性の仮面や、犬、毛むくじゃらのお化けなどが用意され並べられていた。タタカンのチームは各村にあり、10チーム以上あるそうだ。各村ごとに分かれて待機しており、それぞれが線香のようなものを焚いて儀式を行っていた。




タタカンのパフォーマンス
ステージではガムランや太鼓が演奏され、タタカンのパフォーマンスが始まった。それぞれのチームが順番に登場してきて、ステージの司会者が紹介をする。全チームが横一列に並び、等間隔に分かれて、それぞれの踊りを披露し始めた。女性のコスチューム、犬、毛むくじゃらのモンスター、タタカン、等順番に披露されていく。犬がパフォーマンスする時には、全てのチームで犬のパフォーマンスが行われ、10人くらいの人が同時に犬を踊っており、それ以外の役は後ろで待機している。犬の出番が終わったら、次に別のキャラクターが踊るというように、披露されるパフォーマンスには順番があるようだ。
僕は日本の獅子舞と似たようなものだと想像していたし、中国にも獅子舞はあるから、アジアにはどこにでもスタイルなんだろうと思い見学していた。タタカンは3人で踊られる点が、日本の獅子舞とは違うが、見た目や、パフォーマンスの仕方はよく似ている1。
トランス状態になるパフォーマー
しかし、全く違う部分が1つあった。最初は何が起こっているのか全く分からなかったのだが、パフォーマンスをしている人達が、トランス状態になるのだ。中でも、犬のパフォーマンスとタタカンで一番前を担当している人の二つのパートでは、ほとんど全員がトランス状態に陥る。10組が同時にパフォーマンスをしているので、あちこちでトランス状態になっていた。急に暴れまわったり、目の焦点が合わなくなり意識を失うパフォーマーが続出するのだ。
また、トランス状態になるパフォーマーの意識を回復させるために待機している人もいる。彼らは、トランス状態になり暴れる人が出ると、暴れないように複数人で押さえつけ、パフォーマーを寝かせる。そして、腹から頭のほうへ向けて、何かを引っ張りだすような動きを手でしている。腹のあたりに手を置き、手を握りしめ、ゆっくりと頭の方へ向かっててを動かす。最後は、素早く手を後方へ動かし引っこ抜くような動きをして、パフォーマーの目を手で覆うと、トランス状態から解放されていた。それでもトランス状態から回復できない人は、前かがみの状態をつくり、背中を叩いて霊魂を吐き出させるような方法や、二人がかりでパフォーマーをブリッジさせるような姿勢にさせ、霊魂を抜くような動きをしていた。中には意識を取り戻すことができずに、ステージの外に運ばれていく人達もいる。
こうなってくると、観客はタタカンを見に来ているのではなく、トランス状態になるパフォーマーたちを見に来ており、日本の獅子舞とは全く違うものだと気が付いた。
全てが終わったあと、ソボントロ村のタタカンチームの集まりへ行ったが、祭りが終って1時間以上経過しているのにまだトランス状態から回復していない人がいて、奥の部屋で寝かせられていた。