夜のコーヒー
夜21時。コーヒーを飲みに行くとインポーが言うので、僕も連れて行ってもらった。インポーのバイクの後ろに乗り、しばらく街の中を走る。近くのカフェにでも行くのかと思っていたが、通ったことがない道をどんどん進んでいく。バイクの後ろに乗りながら、夜の村の様子を観察していた。数人で玄関の前に転がって話している人達が、あちこちで見られる。
しばらく乗っていると、ガソリンを入れるために露店の前で停車した。ペットボトルに入っているので、最初は分からなかったが緑色のガソリンだ。日本ではペットボトルに入れることは禁止されているが大丈夫なのだろうか。ガソリンを注文すると、店主が漏斗を使ってバイクの中に入れてくれる。

その後も長い間バイクを走らせているが、全然カフェにたどり着く様子が無い。どこに向かっているのだろうか。かなり村から離れてしまい、辺りには街頭も無く住宅も見かけなくなっていた。おそらく道の両サイドには田んぼがあるが、バイクのヘッドライトが照らす先しか見えない。真っ暗な道を進んでいく。どこへ連れて行かれているのかと思っていたが、しばらくすると、工房のような所に突然到着した。
DIYスピーカーの工房
工房には、一昨日の深夜にアラックを持ってきた彼がいた。彼もPrewanganのメンバーの一人で、この工房でスピーカーをつくる仕事を手伝っているそうだ。僕たちが到着した時には、その工房でつくられたというスピーカーから大きな音で音楽が流れていた。

この工房では、壊れたスピーカーなどを集めて、新しいスピーカーにして販売している。工房のオーナーは、廃品から出たアンプの基板を再利用して、新しくアンプを作ろうとしているところだった。基板の配線がどうなっているかチェックしている。工房に置かれているどのスピーカーもDIY的なつくりで、コンパネなどを組んで作っているようだ。しかし、販売価格は安くなく、大きなサウンドシステムだと、日本円で数十万円はする価格帯で販売していると言っていた。ジャワ島にはスピーカーが好きな人達は大勢いるので、高くても買い手が多いのだろう。
木の根っこのようなキャッサバ
僕たちが到着するとすぐに一旦作業を辞めて、木の枝などを集め、乾燥したトウモロコシの芯を入れて火を起こし始めた。ジャワに来てから焚火は何度目だろうか。木炭を使っていないのに簡単に火を起こす彼らの手際の良さは、しょっちゅう焚火をしているからだろう。そして、土嚢袋のような袋に入った木の根っこのようなものを持ってきた。何が始まるのか分からず見ていると、キャッサバだよとインポーが教えてくれた。キャッサバを火の中に直接入れて焼き芋のように焼く。1時間はそのまま直火で焼いていただろうか。そして、工房のオーナーがコーヒーを淹れて持ってきてくれた。


キャッサバの味
キャッサバという名前は聞いたことがあったが、本物を見たり食べるのは初めてだ。焼かれたキャッサバは、黒焦げの木のようだった。もともと木の根っこのような質感で硬かったが、焼かれた後も硬い。あまりにも表面が硬いので、地面に叩きつけて割っていた。黒焦げの硬い部分にできた割れ目に指を入れて割っていく。黒焦げと辺りの暗闇とのコントラストでキャッサバの中身は真っ白に見えた。食べてみると栗のような食感。味は、じゃがいものような甘みも感じる。思っていた以上に美味しい。今は米や麺などいろいろな炭水化物を食べているが、昔は主な炭水化物源としてキャッサバがよく食べられていたそうだ。

しかし、焚き火で1時間も調理にかかるとなれば、日本では焚火をすることが難しいので、キャッサバを見つけたとしても、この食べ方はなかなかできないだろう1。そう思うと、とても貴重な経験だったと思う。
食べながら、インポー達はスピーカーの話を数時間していた。インポーはスピーカーを使った作品を作ろうとしているようだ。しかし、いつものようにインドネシア語で話されている時間は推測するほかない。気が付けば今日も夜1時を回った。話している途中雨が降ってきて、雷も光った。最近雨がよく降っている。雨季になったのかもしれない。ようやく、雨が小降りになり帰ることになった。そして、帰り際に、残ったキャッサバをちゃっかり2つもらいバイクに乗った。
- 実際にはサツマイモのように茹でて食べることもできる。主食にする芋類の中ではジャガイモに次ぐ世界第二位の生産量なので、日本でも食べられているかもしれない。タピオカの原料でもある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%90
https://ameblo.jp/westportph/entry-12845481662.html ↩︎